コンコンと、ガラスを叩く音にミランダは窓を薄く開いた。
「きゃっ」
ぬ〜と表れた黒い影に、ミランダは窓を閉めようとして、反対に力強く窓を開けられ、腰を抜かしながら後ず去った。
「な、な、な、、、〜っ」
半泣きで言葉にできないミランダの前に黒い影は立つと、そのフードを取った。
「僕ですよ、ミランダさん。落ち着いて!?」
腰を抜かしたままのミランダの前にしゃがむと、白い髪をかきあげてアレン・ウォーカーはにっこりと笑った。
「アレン‥君?」
「驚かせて済みません。ちょっと正面から来るわけにいかなかったものですから。」
アレンは肩に乗ったティムキャンピーを指差して、探してもらいましたと悪びれも無く言った。
にっこりと笑ったままアレンはミランダを見る。ミランダはどうしていいか分らず、スカートの裾をいじりながら作り笑いを返した。
「ミランダさん。」
「ひぃ〜」
勢いよくアレンに手を取られ、ミランダは反射的に壁に縋りついた。
「済みません、ミランダさん。でも、この手‥教団に来る途中迷子になったって聞きましたけど、その時?」
「あ?、、ああ、これは、、、」
たいした事無いの。
ミランダは慌ててアレンから自分の手を取り返すと、膝の上、スカートの海に沈めた。
「そうそう、迷子になった時にアレン君を知ってる婦人警官さんに会ったわ。とっても誇らしげにアレン君の話をしてくれて‥」
わざと話題を変えたのに、変えた話題にキラキラ眼を輝かせ出したミランダに、アレンは内心息をついた。
『ミイラ取り‥でも‥』
「それでね、わたしも嬉しくなって、ぜったいエクソシストになろうって」
手を隠す事も忘れて、嬉しそうに
「僕の話しなんかが、嬉しいですか?」
「もちろんよ!」
「そうですか!?」
「アレン君の話なら嬉しいわ。」
「そうですか‥」
「そうですよ。」
少し赤くなった頬を袖で擦って、アレンは小さく笑った。
「そうだわ、アレン君。こんなところじゃなくて早くコムイさんのところへ行った方が」
「ここで良いんですよ。まだ任務の途中だから。」
「‥は?」
ようやく立ち上がったミランダは、開こうとしたドアノブを握ったままアレンを振り返った。
「途中なんです。早く帰らなきゃ。」
「ぇえーっ途中ってj‥良いんですか?」
「良くないですよ!?」
「良くないって‥どうして?」
「教団がホームだって、聞きましたか?」
「え?ええ‥」
「前にも言いましたが‥僕は母を知りません。幼かった僕は、育ての親のマナを助ける事はできませんでした。頼るばかりで‥。エクソシストになったここでも、まだまだ頼りないらしくて‥だから、ミランダさんに頼られて、僕も嬉しかったんです。」
「そういえば、モヤシ」
「その話題は置いといて。」
笑うアレンの眉間が痙攣するのを不思議そうに見つめるミランダの視線を、アレンは自分へと戻すと
「僕、言ってほしくて急いで戻ってきたんです。」
「なにを?」
「ただいま、ミランダさん。」
「あ!」
口元に当てた手をミランダは降ろすと、やっと満面の笑顔を浮かべた。
「お帰りなさい、アレン君。」
「ただいま、ミランダさん。」
アレンはゆっくりと驚かさないようにミランダの肩を抱き締めた。
『お母さん代わりはちょっとなんだけど‥さびしかったのね、アレン君』
ミランダもアレンの、まだ少年の背を優しく撫でた。
アレンが行方不明〜ぃ?
「割と早く連絡が来ちゃいましたね。」
教団に轟いた悲鳴に、アレンは名残惜しげにミランダから離れると、窓に足をかけた。
「仕事が終わったら、また。」
「アレ・アレ・アレン、、君?ま、、不味いんじゃ‥?」
ドアの外を指差しあたふたするミランダに、アレンはニッコリ笑った。
「大丈夫です。仕事は手抜かりしません。ミランダさんが待っててくれるから、全力で遂行して全速力で戻ってきます。」
「そう?‥でも、あの、、、?」
「行ってきます、ミランダさん。」
「行って‥らっしゃい、アレン君。」
消えた姿にしばらく佇んだあと、ミランダは再び腰を抜かした。



「アレン君がマザコン?」
ファインダーの言葉に眼を丸くすると、リナリーは噴出した。
「ですが、ティムキャンピーに残っていた映像が‥」
帰り際にとっ掴まって足取りがばれたアレンだが、急を要する事態に早々に解放されていた。
「お母さんがいないからなんて、それはいい訳よ。そう言えば、説得もできかつ同情もかえるって計算でしょ。もっとも、頼られたいっていうのは本音でしょうけどね。」
リムリーはアレンが戻ってくる場所に見当をつけたらしく、迷わず道を進む。
「しかし、エクソシストとして」
「クロス元帥の事、それだけ信用してるって事よ。」
リナリーの楽しそうな様子に、ファインダーはアレンへの信頼と思ってそれ以上の口出しは無かった。
『フォローはしてあげるけど、遊ばせても貰わなきゃねv』
殺伐とした仕事で中におもちゃを見つけたように、楽しげな足取りでリナリーは軽快に走った。

あ〜、字が死んでる〜(涙)。しばらく書いてなかったから、文でモノが分らない〜(大汗)。
でもアレミラです。弟9夜でこのアニメに転んだ7月竜には当然のcpなのですが‥他の方々のカッコイイらびにも結構初心な神田にも揺らいでたりなこの頃(笑)。2008/1/2

お帰りなさいって